- BBCが、大物タレントであるラッセル・ブランド氏の数々のセクハラや異常な問題行動、破廉恥な「実録」放送発言を見て見ぬふりをしてきたとして、猛烈な批判にさらされている。
- 英国の公共放送は過去にも出演タレントによる性加害疑惑などの不適切な行動を見過ごしてきた経緯があり、ジャニーズ問題にも通じる「忖度」の構図は極めて似ている。
- 批判にさらされながらもBBCは自局も関係している性加害疑惑を詳報し続けている。火だるま状態のなか、忖度は結局は「損択=損な選択」であると肝に銘じ、再発防止を徹底することが必要だ。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
英国の大物コメディアン、ラッセル・ブランド氏が人気絶頂期にあった2006〜2013年の間に、当時の未成年者を含む複数の女性に性的暴行を加えた疑惑の続報が、英国などで連日報道されている。高級紙サンデー・タイムズ、同系列タイムズとチャンネル4による合同調査報道が大きく伝えられてから10日あまりが経つ(英国時間27日現在)。
国内外で競合他社も追随し、同氏のYouTubeチャンネルで一時収益化が中止されたり、同氏に関する新たな証言が出たりするたびに、注目度が上がるようだ。社会的な大物による過去の性犯罪を専門とする警察部隊も動き出しており*1、ラジオでブランド氏の冠番組を制作するなど彼を重用していた公共放送のBBC幹部にも、激しい非難の矛先が向けられている。
*1:性加害はジャニーズだけではない、英国は警察専門部隊を投入し1100人以上捜査(9月23日付、JBpress)
ブランド氏への性的暴行疑惑を世に知らしめたサンデー・タイムズは9月23日「司会者は神だった」という見出しの記事を掲載。しばしば同氏の異常な問題行動が公然と行われ、その上セクハラや下品な性的表現がブランド氏の口から公共の電波に乗っていたにもかかわらず、後述する大スキャンダルに発展するまで番組に起用し続けたBBCと同氏との間にあった「問題」について詳報している*2。
*2:‘Presenters were gods’: Russell Brand and the BBC’s problem with power-wielding talent(9月23日付、英サンデー・タイムズ)
同記事には、ジャニー喜多川による性加害と全く同じ構図のメディア業界が抱える問題が浮き彫りにされている。いわく「権力を持ちすぎた」大物タレントらの問題行動に対するBBC幹部による黙認、つまり「忖度」である。
BBCは現在、他にも選挙報道などで定評のある同局の重鎮報道キャスターや、別のラジオDJに関する性的スキャンダル疑惑にもさらされている。
サンデー・タイムズ紙の記事に列挙されている、ブランド氏の当時の異常な行動ぶりには言葉を失った。「BBC内の障がい者用トイレで性交渉を行ったと放送でジョークを飛ばした」「スタジオでカップに放尿した」等々、これ以上筆者には文字で記すことのできないような醜悪な行為が公然と同局で見過ごされていたという。
記事によると排尿に関しては当時、そのことについて言及された同局広報担当者がご丁寧に「同氏には誰かがお手洗いの場所を伝えました」と能天気な答えを返したそうだ。