昼食に福島県産の水産物を食べる岸田首相（写真：共同、内閣広報室提供）
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  • 米人気アニメ「ザ・シンプソンズ」の一コマで、政治家候補が放射能汚染により突然変異した「三つ目の魚」を食べるシーンが英語圏で拡散している。
  • 30年以上も前に放送されたものだが、8月30日に岸田首相が福島産の水産物をカメラの前で食べて安全性をアピールした映像と比較し、「未来を予言した」などとして茶化している。
  • こうした行為は風評被害を拡大させかねない。日本は科学的根拠を基に適切な処理水放出を行っていることを積極的に世界に示し続ける必要がある。（JBpress）

（楠 佳那子：フリー・テレビディレクター）

　原子力発電所周辺の放射能汚染により突然変異した「三つ目の魚」を食べる政治家候補。震える手つきで一口魚を口にしたものの、集まった大勢の報道陣がカメラを向けるなか、ウエッとそれを吐き出す──。

　もちろんこれは、8月30日に福島県産の水産物をカメラの前で実食して舌鼓を打ち、安全性をアピールしてみせた岸田首相の話ではない。1990年11月に放送されたアメリカの人気テレビアニメシリーズ「ザ・シンプソンズ」の一コマだ＊1。

＊1：Two Cars in Every Garage and Three Eyes on Every Fish（1990年11月1日放送）

　9月1日、30年以上も前に放送されたこの番組の画像が、先の岸田首相がヒラメやタコの刺身を前に微笑む画像と並び、英国の無料朝刊紙「メトロ」電子版に掲載された。記事には「ザ・シンプソンズファンがまたも気味の悪い予言的中で驚愕」という見出しが付いている＊2。

＊2：The Simpsons fans shaken as TV series ‘does it again’ with another creepy prediction（英メトロ、9月1日付）

　同様の記事は英高級日刊紙インディペンデント系のインディ100（動画あり）や、英国のみならずCNN News 18や米国のViceニュース（動画あり) 、オーストラリアのnews.com.auなどを通じ、広く英語圏に拡散されている。

　前述のザ・シンプソンズの番組の概要はこうだ。

　メインの登場人物であるバート少年が偶然、原発近くで「三つ目の魚」を釣り上げる。放射能汚染によって突然変異を起こしたのではないかとの疑いで、原発は当局の調査を受け、安全基準を満たしていないずさんな運営実態が明るみに出る。改善を余儀なくされ、莫大な費用を抱える羽目に陥った発電所の社長が、起死回生の策として安全規制の基準そのものを変えてしまえと知事選に出馬する──。

　発電所の社長で次期知事候補が沢山のカメラの前で、原発近くで採れた奇形魚を食べる羽目になる場面は、こうした文脈で登場したシーンだ。33年も前に制作されたこのアニメが、岸田首相が福島の水産物の安全性をアピールするというパフォーマンスを「予言した」というのがおおむね記事の趣旨だ。