久山の小学生が作る地域の絵本

 久山町では、町内にある保育所や小学校、中学校でALT(外国人指導助手)による英語教育を進めている。常時3人のALTが在籍し、それぞれの学校を回りながら英語の授業をサポートしているのだ。ALTを導入する学校は少なくないが、久山町の規模で3人のALTが常駐しているというのは珍しいのではないか。

 それが可能になっているのは、その費用の半分を久原本家が負担しているため。久山町から世界に飛び立つ子どもが増えてほしいと考えた河邉社主が町に働きかけて提案した。

久山町ではALTを活用した英語教育も充実している

 また、小学校の総合学習の時間を使った絵本づくりも、久山町ならではのプロジェクトだ。

 久山町では、小学6年の総合学習で、地域に伝わる伝承や昔話などを調べ、地域の人々をヒアリングしながら絵本を作る。例えば、3年前の6年生は久山町にある首羅山遺跡の話を絵本にした。

 首羅山遺跡は鎌倉時代に作られた中世山岳寺院の遺跡。2013年に国の史跡に指定されている。この遺跡には、次のような伝承がある。

 奈良時代、天平年間に、百済から来た白山権現が乗っていた虎を恐れた村人が虎の首を落としたところ、その首が光ったために薄絹に包んで埋め、十一面観音を祀ったことから首羅山頭光寺といわれるようになった──。

 この伝承について、子どもたちがストーリーを作り、イラストを描いた。

 この他に、『日本書紀』にも登場する斎宮(いつきのみや)や「九州のお伊勢様」と称される伊野天照皇大神宮、久山町が世界に誇る「久山町研究」に関する絵本を作っている。

 小学生が本を作るという経験はそもそもあまりない。それを総合学習で、地域の歴史を題材に作るというところに意味がある。

小学生が作った『わたしたちの首羅山ものがたり』
絵もかなりいい感じ