久山町が世界に誇る「久山町研究」
また、「健康資本」の方でもさまざまなプロジェクトが進行している。久山町が九州大学医学部と実施している「久山町研究(Hisayama Study)」と連動した、生活習慣病の予防・改善プロジェクトがそうだ。
先に久山町研究について説明すると、同研究は1961(昭和36)年から続く、40歳以上の住民を対象とした疫学調査だ。
もともとは日本で問題になっていた脳卒中の予防策を立てるために始まった調査だが、今では高血圧や糖尿病、認知症といった生活習慣病の予防対策に検査対象は広がっている。無料のため受診率は高く、毎年の健診では40歳以上の住民の約5割、5年に一度の一斉健診では6~7割が参加する(がん検診は500円かかる)。



検査は前向きコホートという手法をとる。
例えば、高血圧と認知症の関係を見る場合、認知症を発症していない人が200人、その中に高血圧の人が80人いたとして、高血圧を発症していない120人を毎年の健診で捕捉し、認知症が新たに発症するかどうかを見ていく。長期間、対象者を追える久山町研究だからこそできる手法だ。
久山町研究には、40歳以上の住民の6~7割が参加するうえに、健診に毎年参加する住民が多く、亡くなるまで継続して検査することも可能だ。しかも、亡くなった住民の病理解剖率も75%と高く、死因を正確に調査できる。
それゆえに、医療データとしての価値が極めて高く、“Hisayama Study”と言えば、世界でもその名が知られた存在だ。