地方の衰退が叫ばれるようになって半世紀。地域の賑わいを取り戻すべく、町おこしや村おこしの取り組みが進められたが、高齢化による人口減少の流れに抗うのは容易ではない。山間僻地の中には、移住者など外部の力を借りなければ、コミュニティを維持できない地域も少なくない。
その中で、最新テクノロジーを活用した新しい地域創生が注目を集めている。それは「Crypto Village(クリプトヴィレッジ)」。Crypto(暗号技術などのテクノロジー)とVillage(共同体・ローカル)をつなぐ取り組みだ。第一号は、2021年12月に新潟県長岡市の山古志地域(旧山古志村)で発行されたNFTプロジェクトである。
NFTを地域創生に活用して何が起きたのか。Crypto Villageを主催する林篤志氏に聞いた。(聞き手:篠原 匡、編集者・ジャーナリスト)
※4月に開校した神山まるごと高専をはじめ、様々なプロジェクトが立ち上がる徳島県神山町の現状を描いた著者の新刊『神山 地域再生の教科書』、是非お読みください!
──旧山古志村の「Nishikigoi NFT」は、NFTによる地方創生という世界初の取り組みで大きな話題を集めました。改めて旧山古志村のNFTプロジェクトについてお話しいただけますか。
※NFT:ブロックチェーンを基盤に作成された代替不可能なデジタルデータ。Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略
林篤志氏(以下、林):一言で言うと、旧山古志村が発祥の錦鯉をモチーフにしたデジタルアートをNFTとして発行するというプロジェクトです。
錦鯉のデジタルアート「Nishikigoi NFT」は、コンピューターアルゴリズムによって生成されたジェネラティブアートで、デジタル住民票を兼ねているため、所有している人は山古志村のデジタル村民になることができます。
その目的は、一義的には山古志村に関わる関係人口の増大です。
日本全体の人口が減少し始めている中、いくら頑張っても山古志村の人口を増やすことはできません。その代わり、山古志村に興味を持ってくれるグローバルなデジタル関係人口を増やすことはできるかもしれない。
バルト三国のエストニアは「e-Residency(電子国民プログラム)」を導入した2014年以降、電子国民の登録者は10万人を超えました。同じように、山古志村のデジタル関係人口が増えれば、リアルとデジタルが融合した新しいコミュニティが生まれるのではないか──。そう思って、プロジェクトを立ち上げました。
もちろん、NFTの販売益を独自財源に、様々なプロジェクトを推し進めるということも目的の一つに掲げていましたが、一義的には山古志村に関わる人の母数を広げ、山古志村の未来を考える仲間を増やすことが狙いでした。
第一弾のNFTは2021年12月、第二弾は2022年3月に販売しました。これから第3弾のセールを始めます。
◎Nishikigoi NFT(3rdセール)
現在の山古志地域は人口800人ほどですが、デジタル村民は1000人を超えています(発行量は1470)。それも、日本だけでなく、アジアや欧州など世界中から集まった人々です。
また、第1弾、第2弾の売上高は約1500万円に達しています(1ETH=35万円で計算、ETHはイーサリアムの略)。
NFTを発行したときのキーワードは『「800人+10000人」の新しいクニづくり』。1万人のデジタル村民を目標にしています。
──そもそもなぜ山古志村だったのでしょうか。