業者の指示を断り1000万円近い違約金を請求されたケースも

 では、実際にどんな手口でフラット35の不正利用を勧められるのか。被害に遭った人たちの証言をもとにした典型的な事例を挙げてみたい。

●不動産投資などのセミナーに参加し、不動産ブローカーと出会う
●甘い言葉で誘われ食事を重ねると、将来への不安をあおられ、安心のために投資話を勧められる
●試しに少額の投資をやったら儲かるが、「これぐらいでは不安は解消できない。もっと儲かる方法がある」と不動産投資を勧められ、不動産会社を紹介される
●資金がないと断ろうとすると、「問題ありません。フラット35を利用すれば融資を受けられます」と利用を勧められる
●「フラット35は全期間固定金利型だから安心」「ファミリータイプのマンションを購入すれば、資産を増やすことができる」と勧められる
●「フラット35は自分が住まないとダメでは?」と聞くと、「大丈夫、ちょっとした手続きをするだけで問題なく融資を受けられる。われわれプロにお任せください。書類もこちらで用意します」と強引に契約を結ばされる

 こんな手の込んだ悪質なケースもある。

 神奈川県で4700万円の中古マンションを購入し、賃貸で運用しようと考えていたAさんは、販売業者に相談するとフラット35を勧められた。フラット35のことはよく知らなかったが、金融機関にフラット35を申し込んだら確認の面談があるので、「ここに住むかどうか聞かれるので『はい』と答えてください」とアドバイスされたという。

 違和感を覚えたAさんは業者の指示を断ると、「もう売買契約は成立しているので、解約するためには代金の20%、940万円の違約金がかかる」と言われてしまった。

 とても払える金額ではないので、Aさんは弁護士事務所に相談し、話し合いで解決することになったが、それでも、和解金や弁護士費用など300万円近い持ち出しになってしまったという。

業者の指示を断り、違約金を請求された悪質事例も(写真はイメージ)

 悪質な業者は、売れずに困っている物件を「フラット35の低い金利で利用できる」と不正を勧めるわけだ。業者にすれば、売ってしまえば勝ちで、その後のことは責任を取らないし、最も悪質なケースだと売ってしまってから社名変更や移転などによって姿をくらましてしまうことも少なくないので、そんなケースにひっかかると泣き寝入りするしかない。

 Aさんは軽い気持ちで儲け話に乗ってしまった迂闊さを思い切り反省。「いい社会勉強になった」と諦めて、現在はきちんとした不動産投資を考えようとしているそうだ。