発想の幅を広げる作業には使える
一方で、「アイデア発想のパートナー」になぜなれるか、というと、電通のコピーライターが、クライアントとの折衝に新米コピーライターを同席させる話と酷似しているので紹介します。その場で、新人も色々なアイデアを出すのですが、彼らの発想は業界の常識に凝り固まっていなくて、とても面白いことがあるのです。先輩は、ある程度道筋というか、「このようなコピーが良いだろう」というイメージが出来上がっていて、どうしても発想が限定的になりがちです。そこで、新人の素っ頓狂なアイデアを聞くことで、発想の幅を広げているのです。
AICOも同じで、大量の言葉と言葉の組み合わせを、短時間で算出します。そのうちの多くが、プロレベルには達していなかったり、意味が通っていなかったりするのですが、中には「このフレーズは思いつかなかった」というように、人間のヒントにもなる言葉もしばしばあります。AICOは、人間とは違って疲れ知らずで、求められさえすれば、短時間で大量のコピーを出してくれますから、その利点を生かしているわけです。
現時点で、プロのコピーライターが生成AIを使うとしたら、このように「発想の幅を広げる」という使い方をすると良いのではないか、と思います。
——ChatGPTは「アイデア発想のパートナー」にはなれても、ChatGPT自体の発想はまだ限定的なのですね。
福田:ChatGPTは真面目すぎますからね。ただ、バカ正直というか、天然というか、そういったキャラクターが逆に面白い、と思うコピーライターの人もいるかもしれません。また、ChatGPTは、ネーミングには長けていると思います。例えば車の名前など、ほとんどの名前が特許を取られている中で、日本語や英語、フランス語含めて、「イメージに合う類語を出してくれ」とお願いすると、大量の単語を提示してくれるでしょう。