米オープンAIが開発した生成AI(人工知能)「ChatGPT」の能力と汎用性の高さに、大企業の経営者や研究者が舌を巻いている。さらなる研究開発が進めば、仕事のあり方が大きく変化するだけでなく、今の仕事の多くがAIに代替されると言われている。
そこで「AIでなくなる仕事」と指摘されている各業界の「中の人」たちへのインタビューを通じて、人類とAIの共生を考える連載「直撃!その仕事、AIでなくなる?」をスタートする。
第1回は「コールセンター」を取り上げる。コールセンターの業務は、顧客などからの商品やサービスに関する疑問や質問に、決められた方針やマニュアルに沿って答えることだ。まさに生成AIが得意としている仕事である。
インタビューに応じてくれたのは、日本コールセンター協会会長の呉岳彦氏。約30年にわたりコールセンター業界一筋で仕事をしてきた呉氏が、「ChatGPTの衝撃」について本音を語った。
(湯浅 大輝:フリージャーナリスト)
第1回:ChatGPTでコールセンター消滅?協会会長「文字での対話は敗北、音声なら…」
第2回:チャットGPTでデータ入力業界は消滅?協会会長「知ったかぶりAIに頼れない」
第3回:チャットGPTでコピーライター消滅?元電通マン「天然キャラは発想のヒント」
第4回:チャットGPTで秘書消滅?メール代筆は完敗でも「社長夫人の機嫌は取れない」
生成AI+チャットボットで「通話」が激減?
——単刀直入に質問します。ChatGPTの登場により、コールセンターの仕事はなくなりますか?
呉岳彦氏(以下、敬称略):半分そうで、半分そうでないというところが正直な印象ですね。生成AIに置き換えられる可能性がある業務でいうと、チャットボットやWeb上の「よく聞かれる質問(FAQ)」などの文章、または有人でのチャットなどでしょう。つまり、ウェブ上でのお客様との「文章を介した」コミュニケーションは代替される可能性があります。
懸念しているのは、文章で問題解決できる範囲が広がるにつれて、音声通話自体のトラフィックが減少する可能性もあることです。
ただし、そもそもコールセンターの仕事は、生成AIの登場以前から「人工知能に置き換えられる」と言われていた領域ですが、まだそうなってはいません。いわゆる「コールセンター不要論」は、チャットボットが一般的に使われるようになった2010年代に広がりました。それから約10年が経過した今でも、音声オペレーターの仕事は減っていません。それは「チャットボットでは問題を解決できない、もしくはしたくない」と考えるお客様が多かったことが理由だと考えています。
——それはなぜでしょう。