新聞はChatGPTに関する報道でSNSに出遅れた(写真:AP/アフロ)

 SNSが普及し誰もが情報を発信できる時代になった。さらに、ChatGPTをはじめとする生成AI(人工知能)の登場で多様なコンテンツが猛烈な勢いで生み出されている。「フェイクニュース」など偽情報も氾濫し、何が正しい情報かどうかの判断はますます難しくなった。そんな「情報爆発」の時代をどう生き抜くか。テクノロジーによる「報道の機械化」に取り組むJX通信社の創業者、米重克洋氏が2回に分けて指南する。後編は旧来型の新聞というメディアの限界を指摘しつつ、情報爆発時代の正しい情報収集のあり方を考察する。

(*)本稿は『誰にも「脳」を支配されない シン・情報戦略』(米重克洋/KADOKAWA)の一部を抜粋・再編集したものです。

前編:あの政治家は陰謀論になぜハマった?デマ、フェイクにとらわれる3つの動機

 私たちはデマや陰謀論が極めて身近な脅威になっている現実、あるいはデマとまではいかずとも、不確かな情報や価値を生まない無用な情報が膨大に溢れかえっている現実に直面している。

 こうした状況が、発信者の増加と、その発信手段の多様化の掛け算による「情報爆発」によってもたらされていることはこれまでに述べた通りだ。まさに「玉石混交」であり、言い換えれば消費者が発信する時代の「光と影」がそれぞれより色濃くなっている。

米重克洋(よねしげ・かつひろ) JX通信社 代表取締役。1988年(昭和63年)山口県生まれ。学習院大学経済学部在学中の2008年に報道ベンチャーのJX通信社を創業。「報道の機械化」をミッションに、国内の大半のテレビ局や新聞社、政府・自治体に対してAIを活用した事件・災害速報を配信するFASTALERT、600万DL超のニュース速報アプリNewsDigestを開発。他にも、選挙情勢調査の自動化ソリューションの開発や独自の予測、分析を提供するなど、テクノロジーを通じて「ビジネスとジャーナリズムの両立」を目指している。
 X(Twitter) アカウント(@kyoneshige)

 この現実を生き抜くうえでは、やはり「光」つまり、有用で価値ある情報を多くの発信者からよりタイムリーに入手できるメリットを享受しながら、「影」つまり無用な情報のノイズに溺れたり、不確かな情報に惑わされたりするデメリットを排除するのが理想である。しかし、それは至難の業だ。こうした新しい現実の前では、従来、長年にわたって語られてきたあるべき情報収集の方法論が全く通用しなくなっている。