- 「英国版FBI」と言われるNCAの長官は、生成AIによって児童に対する性的虐待が増加する可能性を指摘した。現に、ダークウェブでは生成AIを使った児童ポルノ画像の生成が議論されている。
- もっとも、実在する児童でない場合、日本の児童ポルノ法では児童ポルノの認定は難しい。生成AIによってポルノ画像が激増すれば、実際の児童を対象にした犯罪を摘発するリソースもパンクする。
- 生成AIが生み出す児童ポルノの問題に対処するには、EUが検討している「AI規制法」のような規制が不可欠のようだ。
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
英国家犯罪対策庁のレポート
英国の警察組織内で、組織犯罪などの重大事件を担当している部門がNCA(National Crime Agency、国家犯罪対策庁)だ。2013年に組織改編によって誕生した際には、「英国版FBI」ともされている。
今年7月、そのNCAを率いるグレーム・ビガー長官が、英国が直面している犯罪のリスクについてスピーチを行った。
彼は銃器を使用した犯罪や違法薬物の使用など、従来型の脅威について触れる一方で、新しいトレンドに関して興味深い指摘を行っている。いわゆる「生成AI」によって、児童に対する性的虐待が増加する恐れがあるというのだ。
【参考記事】
◎Director General Graeme Biggar launches National Strategic Assessment(NCA)
生成AIとは、文字通り何らかのコンテンツ(文章や画像・動画、音声など)を生成してくれるAIを指す。その多くは自然な文章で指示を出すことができる。
たとえば、次の画像は、いわゆる「お絵描きAI」の一種であるAIピカソというアプリに「タンクトップを着て帽子をかぶった少年」と指示して描かせたものだ。
ちなみに、AIピカソは画像のモードを選ぶことができ、この場合は「写真風(Photographic)」を指定している。
こうしたリアルな絵(あるいは「写真」と呼んでしまっても良いかもしれない)を、望み通り、しかもごく簡単に生み出せてしまうのが生成AIだ。
そこまで説明すれば、NCAが生成AIについて、児童の性的虐待に悪影響を及ぼすと考えた理由は明らかだろう。
そう、いまこうした生成AIを利用して、児童ポルノに該当するコンテンツを生み出そうとする犯罪者が急増しているのだ。