(小林 啓倫:経営コンサルタント)
恋人にもなるChatGPT
今からちょうど10年前の2013年に「her/世界でひとつの彼女(原題:her)」という映画が公開された。妻と離婚協議中の男性が主人公で、ある日、手に入れた「サマンサ」という人工知能搭載OSに恋をしてしまう、というストーリーだ。
サマンサには人格があり、自然な文章と声でコミュニケーションしてくれる。声を担当したのが女優のスカーレット・ヨハンソンということもあってか、サマンサは非常に魅力的に描かれていて、主人公が恋に落ちるのも仕方ないと感じさせる映画だった。
「her」以外にも、さまざまなフィクション作品の中で、人間が「人間のような機械」に恋愛感情を抱くというシチュエーションが描かれてきた。
実際に、Twitterのボット(自動的にツイートやリプライなどを行うように設定されたプログラム)とやり取りをしているうちに、それが本物の人間だと勘違いして恋してしまったなどというケースが既に発生している。
「人間と機械の恋」は、想像以上に身近なものと言えるだろう。
とはいえ、事前に設定されたセリフを出力したり、限られたテーマの質問だけに回答したりというのではなく、「her」に登場するサマンサのように、その場でメッセージを「考えて」コミュニケーションする機械が普及するのは、まだ先のことになると思われてきた。
ところが、近年のAI技術の急速な発展によって、「her」がフィクションではなくノンフィクションになる日がそこまで来ようとしている。
実際に、大きな注目を集めている高性能対話AI「ChatGPT」を使い、それに理想のパートナーを演じてもらったらどうなるかという試みをした結果を、SNS上で数多く確認することができる。
筆者も試してみたところ、こんな会話になった。