(小林 啓倫:経営コンサルタント)
AIの「陳情」に議員はどう反応したか?
今年4月、全国で統一地方選が行われた。SNS上では「街中を選挙カーが走り回ってうるさかった」といったつぶやきも見られたが、私たちが民主主義を是とし、皆で政治的決定を行う仕組みを維持しようとする以上、一人ひとりが政治への関心を持ち続けることが欠かせない。そうすることでしか、政治に私たちの声を反映させることはできないからだ。
しかしAI技術の進化は、従来通りの民主主義のあり方を根本から機能不全に追いやるリスクを生み出し始めている。そうした懸念の一つを裏付けているのが、最近コーネル大学の研究者らが発表した、とある論文だ。
それは同大学のコーネル・テック・ポリシー研究所で所長を務める、サラ・クレップス教授が率いる研究グループが発表した論文である。
この中で彼らは、全米各州の州議会議員7132人に対し、さまざまなテーマに関する陳情書を送るという実験を行っている。送られた陳情書は、合計で約3万2000通にも達したが、実はすべてを人間が書いたわけではない。一部をAIに書かせ、その反応を見るという実験を行ったのである。
この実験で文章の生成に使用されたのは、GPT-3という大規模言語モデル(LLM)である。このモデルは、今話題の対話AI「ChatGPT」でも使われているものだ。
ただし、現在のChatGPTで使用されているのは、それより性能がアップしたGPT-3.5というバージョンである。さらに同モデルおよび対話AIを開発したOpenAI社の有料会員は、さらに新しいモデルであるGPT-4というバージョンを使えるようになっている。
このGPTシリーズがどんな文章を生成できるか、日本語で試してみよう。GPT-4を使うように設定した上で、ChatGPTに「陳情書を書いて」とお願いすると、次のような文章が自動生成される(長かったため前半部分を抜粋)。