- 米カリフォルニア州サンフランシスコで、完全自動運転によるタクシーサービスを展開しているクルーズの自動運転車が緊急車両を妨害する事件が起きた。
- 自動運転車による「実験」が続く米国では、車両が緊急車両などを妨害したり、火災現場に迷い込んだりする事例が後を絶たない。
- 「技術的無意識」の領域に入っているクルマ社会の中で、自動運転の問題点を事前に把握するのは容易ではない。緊急時対応は可能なのだろうか。
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
「今すぐここからどきなさい」
現地時間で今年6月9日の午後9時過ぎ、米カリフォルニア州サンフランシスコで投稿された、ある場面を動画に収めたツイートが大きな注目を集めた。
ツイートには、「仲間のみんな、フォルサム通り/24番街には近づかないで。銃声が響いてる」と注意を呼び掛けるコメントとともに、「無謀な(reckless)クルーズの車がいるな」という一言が添えられている。
クルーズ(Cruise)とはゼネラル・モーターズ傘下にある企業で、サンフランシスコに拠点を置き、同市でドライバーの乗っていない完全自動運転によるタクシーサービスを展開している。
◎Cruise As You Are | Connect(クルーズによる解説動画)
そのクルーズ車が「無謀」とはどういうことか。
ツイートにもあるように、このときサンフランシスコ市内で銃撃事件が発生しており、9人もの負傷者が出ていた。そこで緊急車両が現場に向かったのだが、無人の自動運転車に行く手を阻まれ、立ち往生してしまったのである。
動画内では、救急隊員がクルーズのロボットタクシー(もしくはそれを遠隔監視している同社のオペレーター)に向かって、「救急医療と消防の邪魔をしている、今すぐここからどきなさい」と叫んでいるのがわかる。
クルーズはこれに対して声明を発表し、「自動運転車は現場に近づいた際に停止し、Uターンして邪魔にならない位置に停車して、救急車両を含むすべての車両の邪魔になることはなかった」としている。
ただし、邪魔にならない位置に移動するのにどのくらいの時間がかかったかについては明らかにしておらず、ツイート内の映像にあった通り、救急車両の走行を妨害する瞬間があったことは事実のようだ。
実は、クルーズ車による緊急車両の妨害は、今回が初めてではない。