秘書の仕事はChatGPTなど生成AIの登場でなくなっていくのか(写真:アフロ)

 米オープンAIが開発した生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」の能力と汎用性の高さに、大企業の経営者や研究者が舌を巻いている。さらなる研究開発が進めば、仕事のあり方が大きく変化するだけでなく、今の仕事の多くがAIに代替されると言われている。

「AIでなくなる仕事」と指摘されている各業界の「中の人」たちへのインタビューを通じて、人類とAIの共生を考える連載「直撃!その仕事、AIでなくなる?」。第4回は一般社団法人日本秘書協会の篠原昭子理事に話を聞いた。

 ChatGPTは、スケジュール調整を行ったり、メールの作成を手伝ったりすることができる。「ChatGPTは優秀な秘書になる」と話す社長もいるくらいだ。

 篠原氏は秘書歴26年のベテランで、現在は外資系資産運用会社の社長秘書を務めている。秘書はChatGPTに駆逐されるのか。

(湯浅 大輝:フリージャーナリスト)

第1回:ChatGPTでコールセンター消滅?協会会長「文字での対話は敗北、音声なら…」
第2回:チャットGPTでデータ入力業界は消滅?協会会長「知ったかぶりAIに頼れない」
第3回:チャットGPTでコピーライター消滅?元電通マン「天然キャラは発想のヒント」

予定の「優先順位」をつけられないChatGPT

──単刀直入に質問します。ChatGPTの登場により、秘書の仕事はなくなりますか?

篠原昭子氏(以下、敬称略):「秘書」という仕事があるかぎりはなくならないと思います。秘書という仕事をどのように定義するかにもよりますが、例えば経団連の事務局には「秘書室」というものがあり、大手企業の経営者にとって秘書の存在は必須です。

篠原昭子(しのはら・ しょうこ)  一般社団法人日本秘書協会理事。秘書歴26年、外資系資産運用会社社長秘書、秘書3冠保持者(CBS(国際秘書)検定・秘書検定1級・CAP-Certified Administrative Professionals(経営管理プロフェッショナル(USA)能力検定試験))。一般社団法人日本秘書協会認定講師

──「ChatGPTは秘書業務を代替できる」と考えている人が多いのは、プラグインの活用を含め、以下のような従来の「秘書的な」仕事を効率化できるからだと思います。例えば、(1)スケジュール管理・調整、(2)メール代筆、(3)リサーチ業務などです。

篠原:まず、スケジュール管理からお話ししましょう。当協会に登録する秘書は、大企業の社長を含めた、経営者層の上司を相手に働く秘書がメインで、5分単位のスケジュール変動を前提に動いています。

 私の理解では、ChatGPTを含め、他のAIを導入したカレンダーアプリでも、「日程調整の候補日」を算出することはできても、「(急を要する場面を含めた)予定の優先順位」までつけることはできません。秘書にとって上司である社長が、どのような行動スケジュールを用意すれば、もっとも効率的に業務を終えられるのか、会社の成長につながるのかまで考えてスケジュールを調整することはできないのです。

 私も以前外国人上司についていた時、上司が9月に名古屋に出張する予定があったので、先方に予定の詳細を投げていました。すると、ちょうど上司が名古屋に出張している日を挟んだ期間に、スイスからお見えになる別のお客様から、4日間来日するから会食したい、という提案があったのです。

 名古屋から都内まで1時間半で到着することですし、出張日に都内で19時からスイスのお客様とのディナーの予定を入れました。が、当日になって上司から「やっぱり今日は、会食は入れたくない」と言われたのです。秘書業ではしばしば、上司の気分の変化にも対応しなければならないことがあります。

 結局、スイスから来られた方との会食は別日に変更になったのですが、リスケができたのも、「先方はスイスからわざわざ来日していることだし、仕事だけではなく、プライベートの予定もあるだろう。プライベートの予定は変更可能だ」と最初から踏んでいたところもあります。これが、先方にとって「その日しか対応できない」という、急を要する場合であればもう少し違う対応をしていたと思います。