メール代筆、リサーチ業務は完敗?
──ChatGPTは「イエスマン」にしかならないということですね。
篠原:上司を裸の王様にさせないことができるのも優れた秘書の特徴です。上司の横暴や無理解に、部下が業を煮やしているとしても、部下が直接不満を上司に言うことはできませんよね。反対に、部下が言えないことを秘書であればスパッと言えることもよくあります。
上司である経営者からしても、秘書は他意がないから、素直に受け入れやすいのです。また、昨今はコンプライアンスがうるさく、経営層である上司の独断で情報を出すことも難しくなってきています。そこで、秘書がさまざまな部署と連携して、コンプラ事項を確認するのです。
秘書の仕事の大部分が、「上司のサポート」にあることはもちろんなのですが、最終的には「会社の潤滑油」であることが重要なのだと思います。こちらの指示通りに的確に答えを返してくるのがChatGPTであるとしたら、優れた秘書は、上司も気づいていない最適解を算出し、行動できるのです。
──メールの代筆やリサーチ業務、といった仕事に関して、ChatGPTをどのように見ていますか。
篠原:メールにしろ、リサーチ業務にしろ、決まった文章フォーマットのパターンを瞬時にいくつも出す、という種の仕事に関してはChatGPTにかないません。持っているデータ量が桁違いですから完敗です。
ただ、メールに関してはそもそも、最近は秘書ではなく社長が書くのが一般的になってきています。また、頻度自体は減っていますが、いまだに招待状やお礼状を紙で記すケースもありますので、そこに関しては代替されないかなとも同時に思います。さらに言うと、ChatGPTは例えば会食後のお礼メールなどにおいて、その会食時にどんなエピソードがあったか、相手方が喜びそうなセリフは何か、といった情報をひねり出すことはできません。こういった類の仕事に関しては、人間が行う必要があるでしょう。
私が個人的に、ChatGPTに一番期待しているのは、プラグインを活用した、オンラインミーティングにおける議事録の自動生成です。数は少ないですが、秘書の中には社長が出席していない会議の議事録を作る、という業務に従事している方もいます。この仕事は、ChatGPTで非常に楽になるのではないでしょうか。