音声でしか対応できない領域は?

——コールセンターのビジネスモデル自体が生成AIの登場で大きく変化していくのですね。

:そうですね。生成AIが与えた衝撃は非常に大きいと思っています。生成AIの開発動向にも左右されますが、向こう5年以内に、大きく仕事のあり方が変化する可能性もあります。

 特に今の20代以下は、音声よりもテキストベースの会話を好む傾向があります。電話だと「言質を取られる」と臆病になって、文章を好む層が多いようです。今後は彼らがあらゆる商品でメインの購買層になっていくわけですから、「顧客の音声嫌い」という傾向は加速するかもしれません。

——そういった時代の中でも、「音声でなければ対応できない」領域はどのようなところでしょうか?

:やはり、保険や不動産などの金融商品でしょう。これらの商品の販売には法規制があるのはもちろん、生成AIが間違えた時のリスクが大きすぎます。説明責任が重要になりますから。また、車などの高額商品も難しいのではないでしょうか。ブランドとの信頼関係ありきの商品ですから、コールセンター業を全て生成AIに代替する、ということはないと思います。

 地味な例ですが、携帯電話など通信契約も一朝一夕には生成AIに置き換わらないと思います。細かな利用規約の変更があったり、頻繁に法改正が行われたりする分野ですから、こうしたアップデートに対応するのは、人間ならではの仕事だと思います。1回の買い物あたりの金額も、1万~2万円と決して安くはありませんし。