ボットとの会話はそもそも面倒くさい
呉:みなさんも経験があると思いますが、チャットボットの会話は非人間的で、返答も形式的でバリエーションが少ない。そうしたコミュニケーションを面倒くさい、と思うお客様が多かったのです。
ChatGPTがすごいと思ったのは「極めて自然な答えを会話の中で返してくる点」です。ささいなことですが、質問者の意図と違った返答をChatGPTがした場合、自ら謝って、的確な返答を再度します。こうした能力はこれまでのチャットボットにはありませんでした。
ChatGPTが優れている点は従来のチャットボットとの比較に限らず、人間によるチャットとの比較でもあります。ChatGPTは膨大な量のデータを学習させているので、大半の人間より速く、正確に返答できるのは、みなさんご承知のとおりだと思います。
従来のチャットボットにしろ、人間によるチャットにしろ、「音声を介さない領域」、つまりテキストでのやりとりにおいては、ちょっとChatGPTに太刀打ちできないのではないかなと思います。
私はこの業界に身を置いて30年ほどになりますが、ChatGPTをはじめとした生成AIが与えた衝撃は、過去に例がありません。とにかく、あれだけの豊富なデータを基に、極めて人間らしく、自然な会話を展開できる技術は「すごい」の一言です。
——文章で顧客の問題を解決できる範囲が広がることで、音声オペレーターが不要になる可能性があるということですね。現時点で、かなりの業務が生成AIに代替されるとお考えですか。
呉:オープンAIのChatGPTをはじめ、各社の生成AIサービスの「社内版」、つまり顧客企業のデータを全て読み込ませたソリューションが販売された際には、Web上の文章を介したコミュニケーションにおいては生成AIがかなり入ってくると思います。特に、BtoCのサービスや商品、コールセンターに問い合わせるまでもない簡単な受け答えに関しては、ほぼ全てが生成AIに代替されるかもしれません。無論、これは生成AIを開発・販売する各社の動向にも左右されることで、現時点では何とも言えないところでもあるのですが。