生成AI+人間の体験で、より良いコピーに

——AICOをリリースされたのが2017年。それから約6年で、生成AIに関する議論が「実際の職業に対する脅威」にまで至ったことをどう受け止めていますか。驚きはありますか。

福田:それはありますね。私がAIとコピーライティング、という分野に関心を持って、実際に動き始めたのが2013年なので、10年でここまで技術が進むのか、と感じています。当時は、「(自然言語処理分野の)AIは確かにすごいけれど、まだできないことも多い」というのが、業界の総意と言いますか、率直な感想だったと記憶しています。

 生成AIの世界で、OpenAIの「GPT」が与えた衝撃はとても大きくて、やっぱりあれだけのデータ学習量やコンピュータのリソースを使わないと、これだけの優れものはできないのか、と心が折れた、と言っている人もいます。

真面目すぎるChatGPTは「天然キャラ」

——AIの進歩は日進月歩で、コピーライターを含め、さまざまな業種のプロが、ChatGPTを脅威だと思っていることも事実だと思います。福田さんが望ましいと考える、生成AIとの付き合い方を教えてください。

福田:ChatGPTもツールでしかないので、イラストレーターにとってPhotoshopが必須のツールであるように、それをいかに使いこなしていくか、という意識が大切なのだと思います。

 生成AIの圧倒的な強みは、疲れ知らずなところと、大量のアウトプットを出してくれるところ、そして間違いを発見できるところ。こうした強みを生かす活用方法を、仕事の中で取り入れていくのが良いのではないかと思います。

 すでにAIが人間を打ち負かした「チェス」の分野では、人間とAIがタッグを組んだ「アドバンスト・チェス」という競技があります。何でも、人間+AIは、AI単体よりも強いそうです。

 このように、人間がAIと共生すれば、これまで人間だけではできなかったことができるようになり、人間の能力がさらに増強される、ということもあり得ます。コピーライターの世界でも、ChatGPTの「天然キャラ」に触発されて、良いコピーを書けるようになるのかもしれませんね。