――ビッグモーターも自動車保険の販売代理店になっていますが、契約者に見えないところで、そういう「仕組み」が……。

松永 今回の件では、損保会社にとって利益の高い(自賠責契約件数の多い)代理店と、契約者にとって価値のある(質の高い修理のできる)修理・整備事業者をはかる物差しが乖離してきたことが浮き彫りになりました。そのことに注目すべきだと思います。

――海外では、修理する業者と保険を売る業者は別のようですね。

松永 はい。本来はそうあるべきだと思います。

実は小さくなかった自賠責引受けの利益

 日本損害保険協会のサイトには、『自賠責保険』の説明として以下のような記載があります。

〈●保険会社の利益はありません

自賠責保険は、被害者の救済を目的とした社会保障的な性格を有する保険であるため、保険料に利潤は含まれておらず、保険会社の利益は発生しません。〉

 たしかに、被害者救済のために国が運営するこの保険は「ノーロス、ノープロフィット」といって、赤字も黒字も出さないことになっており、この保険による利益は発生しません。

 しかし、この説明を鵜呑みにしてはいけません。

 損保会社には自賠責保険の契約を引き受けるごとに、「社費」(名目は営業費や損害調査費など)という名の手数料が入るシステムになっているのです。

 損害保険料率算出機構によれば、2023年4月1日以降の社費は、契約1件当たり5056円。松永氏は、『自賠責保険の粗利の高さ』と表現しましたが、業界全体で見ると、この「社費」は年間2000億円を超えており、大変大きな額であることがわかります。

自賠責基本料率の内訳(損害保険料率算出機構HPより)*本図と関係のない注釈の一部は編集部で省略しています
拡大画像表示