(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
ビッグモーターの問題が連日大きく報じられています。
損保各社は、不正に請求された保険金の返還や、今回の件で生じた調査費用などについて、ビッグモーターに損害賠償の請求を検討しているそうです。
(参考)〈損保ジャパン「不正の可能性」出向者通じ認識 損保各社は損害賠償請求を検討 【ビッグモーター保険金不正】〉(FNNプライムオンライン)
もちろん、新たなキズをつけてまで修理費用を水増しし、保険金を請求した同社の行いは論外であり、許されるものではありません。
しかし、そのような行為によって偽造されたキズを見抜けず、膨大な数の保険金支払いに応じてきた損保会社に責任はないのでしょうか。
「不正」を知りつつなぜ損保は自社の契約者にビッグモーターを紹介したか
上記記事によれば、損保ジャパンは昨年の夏、すでに不正の可能性を把握していたとのこと。にもかかわらず、ビッグモーターを「指定工場」として契約者に紹介し続けてきた理由は、どこにあるのでしょうか。
「本来、修理・整備事業者からの修理の見積もりに疑義があれば、損保会社の損害調査部門が問題を見抜いて、徹底的にチェックすべきです。しかし、今回は相手が大きな販売代理店であるため、見積もりチェックが機能不全に陥っていたことが顕在化したのでしょう」
そう指摘するのは、自動車のアフターマーケットに詳しい、株式会社ジェイシーレゾナンス代表取締役社長の松永博司氏です。
松永氏はこう続けます。
「そもそもこの問題の起源は、『自賠責保険の粗利の高さ』にあります。それゆえに、契約者不在の業界構造が構築され、こうした問題が露呈したのではないでしょうか」
松永氏の言う『自賠責保険の粗利の高さ』とは、いったい何を意味し、今回の問題にどう影響したのか……。詳しくお話を伺いました。