「入庫誘導」と自賠責取り扱いの関係

――事故などで車が破損して修理が必要になったとき、損保会社から修理工場を紹介されることがあります。いわゆる「入庫誘導」(指定工場への紹介制度)ですが、ビッグモーターも特定の損保会社から多くの入庫誘導があったと指摘されています。そこで故意に自動車を傷つけられたりしている例もありました。今回の問題を見ていると、本当に損保から紹介された業者を信じてよいのか、不安になりますね。

松永 そうですね。契約者は「損保会社の指定工場ならきっと技術もしっかりしており、安心だ」と認識し、何も疑わず、紹介された事業者に修理を依頼されるケースが多いのではないでしょうか。

――でも今回、このような信じられない事実が発覚しました。そもそも、損保会社は指定工場をどのような基準で選んでいるのでしょうか。

松永 契約者がイメージする「指定工場」とは、修理や整備の技術がしっかりしていて、安心できる工場だと思いますが、実は、その期待とは大きくかけ離れているのが実態だと思います。

――技術が重視されていないということですか?

松永 損保会社が入庫誘導している指定工場は、技術より、収保(正味収入保険料)の大きい事業者が優先されている実態があります。

――損保会社が、契約者より自社の利益を優先していると?

松永 はい。特に自賠責保険を多く販売している自動車修理・整備事業者が優先されています。車検や車両販売を多数行っている事業者は、当然、自賠責保険の契約件数も多くなります。逆に、事業者の方は、入庫誘導の件数が多い損保会社の自賠責保険を優先的に販売することで、さらにその損保会社から多くの入庫誘導を受けることができるわけです。