既存のメンタルヘルス対策には課題もある(写真:mapo/イメージマート)既存のメンタルヘルス対策には課題もある(写真:mapo/イメージマート)

 前回記事「全く異なる仕事体験で得る気づき、従業員のエンゲージメントを高める大人の職業体験とは何か?」では、大人の職業体験が従業員エンゲージメントに与える影響について探りました。

 職場を離れ、全く異なる環境で新たな仕事を体験することで、従業員は自身の仕事への向き合い方を見つめ直し、エンゲージメントを高めていく。そんな職業体験の効果を、参加者の生の声とともにお伝えしました。

 今回は職業体験のもう一つの重要な効果、メンタルヘルスの改善について掘り下げていきたいと思います。

 ストレス社会と言われる現代において、従業員のメンタルヘルスの重要性が叫ばれているのはもはや常識です。心の健康は、従業員のパフォーマンスに直結する要因だからです。

 実際、メンタルヘルスの悪化は生産性の低下や欠勤率の上昇など、企業にとって大きな損失をもたらします。厚生労働省の「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスを感じている労働者の割合は58.0%にも上っています。

 つまり、日本の労働者の約6割が日々ストレスを感じているということ。このストレスが溜まりに溜まると、バーンアウト(燃え尽き症候群)や、うつ病などメンタルヘルスの不調につながります。

 WHO(世界保健機関)の報告書では、メンタルヘルスの改善が生産性の向上につながることが示唆されています。つまりメンタルヘルスへの投資は、従業員の幸福度を高めるだけでなく、企業の業績アップにも直結する重要な施策だということです。ここからも、メンタルヘルスとパフォーマンスの密接な関係が見えてきます。

 それでは、現状のメンタルヘルス対策にはどんな課題があるのでしょうか。