白山と手取川 写真/アフロ

(歴史家:乃至政彦)

●『謙信×信長 手取川合戦の真実』発売(1)

シンクロナスで連載していた『謙信と信長』

 シンクロナスで長期連載していた『謙信と信長』が完結して、タイトルを『謙信×信長 手取川合戦の真実』に改め、令和5年(2023)5月中旬(15日配本)に発売する運びとなった。

 ちなみに謙信と信長の間にある「×」は、「tai」と読んでもらいたい。掛け算とは関係ない。言うなれば、砕け散るまで戦え──である。

 テーマは本書のサブタイトルにある通り、天正5年(1577)9月23日の「手取川合戦(tedorigawakassen)」である。

検証・手取川合戦

 手取川合戦で論点となりやすいのは、次の謎であるだろう。

①上杉謙信と織田信長は、参戦したのか?
②羽柴秀吉は合戦を怖がってさっさと離脱したのか?
③参戦した上杉軍の指揮官は誰なのか?
④なぜ『信長公記』に合戦の詳細が記されなかったのか?

 今回は①と②についてお話をさせてもらおう。

 まず①である。

 一次史料の謙信書状を見渡すと、謙信はこの戦いが始まる前からその直後まで、「信長が出勢してくるので」「信長は何も知らずに」「信長が重ねて出てくるならば」などとする表現が目立ち、どうやら信長の出馬を確実視していることを認められる。

 謙信本人は、何者かが「申し廻り候わば」と、その情報源が人から人へ報告されて自分のもとに届いたことを述べている。私はこれらの人物はある程度特定できるのではないかと考えた。

 謙信はなぜ信長出馬を確信していたのか、本書ではその根拠も追求している。冒険的な解釈なので、袋叩きにあうかもしれないが、そうなったらそうなったで、仕方ない。笑いたい人はぜひ一読してもらいたい。もちろん素直に受け止めてもらえれば本望だが、これ以外の答えなどあり得ないとまで主張するつもりはない。