NATO事務総長が戦車供与の現状をアナウンスした理由

 4月下旬、NATOのストルテンベルグ事務総長は「NATOと友好国は戦車230台以上、装甲車両1550台以上をウクライナに供与した」と表明、約束した数の98%以上に達すると断言した。

 これは前述の9個旅団の戦車、装甲車・自走砲数と大差がなく、図らずも流出機密文書の信憑性の高さを立証する格好だ。このため「NATO首脳がわざわざこの時期にアナウンスするのには、何か裏があるのでは?」と、専門家の間では虚々実々の情報戦が展開されているのでは、との見方が支配的だ。

レオパルト2の操作と保守についてウクライナ軍に訓練を行うスペイン軍(写真:ロイター/アフロ)

 さて、12個の旅団が用意されていると見られる反転攻勢軍団のうち、9個旅団の他にも国内で訓練中の旅団3個が存在するようだが、これについては情報が皆無に近い。一説には、実はこれこそが作戦の主軸で、1個はレオ2、もう1個は1世代前の独製「レオパルト1」(レオ1)をそれぞれ90台前後備えた“最強戦車旅団”では、との深読みもある。

 レオ1は多少打撃力で劣るものの、レオ2と同等レベルの性能を誇る照準システム(FCS/射撃統制装置)を持ち命中精度に優れる。

 さらには「供与は当分先とアメリカが念押しする米製M1A1(M1の120mm砲搭載型)の引き渡しと戦車部隊訓練も、実は秘密裏に進められ“M1A1旅団”1個も仕上がっている」と勘繰る声もある。

120mm砲を装備する米陸軍の主力戦車「M1A2」(写真:米陸軍)