ロシア軍機を迎え撃つ戦闘機、対空ミサイルの配備は?

 ウクライナの航空戦力は、2022年12月時点で戦闘機はミグ29、スホーイ27など100機前後、攻撃機はスホーイ24/25など30機あまりに過ぎず、エアカバーするにはあまりにも心許ない。

 攻勢作戦を行う時、軍団の指南役である米軍なら、圧倒的な戦闘機・攻撃機を繰り出し、いの一番に敵のレーダー施設を叩き、戦闘機や対空ミサイル(SAM)の動きを封じるだろう。その後に対空ミサイル本体や航空基地、指揮・通信施設、補給路、砲兵部隊を攻撃していくのがセオリーだ。

 つまり強大な空軍戦力で完全に制空権(航空優勢)を握ってからでなければ地上部隊は進撃しない、というのが第2次大戦以来の米軍の戦い方で、逆に制空権を握らず地上のSAMだけで戦車部隊が突撃するという戦法は、彼らのバイブルにはない。

 ウクライナ軍はNATOが供与を始めた米製「パトリオット」(数十~160km)を皮切りに、既存の「S-300」(同90~150km)など比較的射程距離の長いSAMを有するが、速攻第一の旅団と行動し、所定位置にセットしてロシア軍機を迎え撃つというのはあまりにも無理があるだろう。

 進撃ルートの途中はまだロシア軍の攻撃が続く戦場で、ここにミサイル発射機やレーダー、管制室の3点セットをセットするのは非現実的だ。敵に簡単に狙われて破壊される可能性が高く、それ以前に再装填用の高価なミサイルも大量に運びこまなければならない。

「最前線のギリギリにSAMを配備し、長い射程を活かしてロシアの戦闘機・攻撃機を迎撃すればいいのでは?」との指摘もあるようだが、軍団が到達目標とするアゾフ海は、最前線から100km以上も離れ、パトリオットやS-300でなければカバーは無理。しかも「乱れ撃ち」できるほどミサイルが潤沢にあるわけではない。

 軍団にはSAM装備の装甲車や歩兵が肩撃ちする携帯式SAM「スティンガー」、各種対空機関砲も配するが、護身用の拳銃のようなもので、射程は短くこれを防空の要(かなめ)とするのはあまりにも無謀だ。

「ウルトラC」として、多数のドローンを使ってエアカバーするとの説もあるが、少々近未来過ぎてリスクが高すぎると見るのが普通だろう。