反転攻勢の殴り込み部隊「第33旅団」の狙い

 一方MBTの天敵が、塹壕などに潜み狙い撃ちする隊員の存在だろう。

 だが「第33旅団」は歩兵輸送用にトラックに似たタイヤ式装甲車(米製「マックスプロ」)を配備。もともとアフガニスタンでのゲリラ戦用に開発し、地雷を踏んで車両が大破しても乗員は無傷という構造だが、果たしてロシアの正規軍との戦車戦に相応しいのか、との懸念もある。

 もしかしたらこの情報こそがロシア側を混乱させる「情報戦」かもしれない。これまでのロシア侵略軍の稚拙な戦い方を踏まえ、「トラック型装甲車で十分」と確信したのだろうか。

 ウクライナの国土の大半は、小麦・トウモロコシ畑が地平線のかなたまで広がる大地。ただし雪解け時の春は水田のようにぬかるみ、キャタピラを履く戦車でさえ足を取られるほど。しかし5月に入れば地面は固まり、4WDのトラック型装甲車も十分走れる。

 キャタピラ式の装甲車よりも燃費がよいので補給部隊の負担も軽くなり、整備や操縦も楽で、地雷でタイヤが吹き飛んでも予備タイヤと交換してすぐさま戦線復帰ができる。逆にキャタピラは意外と外れたり故障したりする代物で、地雷で損傷した場合は修理にも時間がかかる。これらを考えれば「トラック型装甲車」の方が合理的と判断したのかもしれない。

 一方、大半の旅団の戦車数が「30台程度」に過ぎない点も気になる。だが対するロシア侵略軍は「大隊戦術群」(BTG。兵力600~800名、戦車10台前後、歩兵戦闘車約40台)と呼ばれる部隊が基本で、これを2つ合わせ「旅団」を編成するようだ。

 つまり同じ旅団でもウクライナの機械化旅団が「兵力約5000名、戦車約30台」に対し、ロシア側は「同1200~1600名、約20台」なので、十分対抗可能だと踏んだのかもしれない。

 これらのことを勘案すると、第33旅団は反転攻勢の「殴り込み部隊」として先陣を切り、ロシア側の防備の薄い所に楔(くさび)を打ち込み、他の旅団はこれに続き脇を固めながら雪崩れ込み突破口を広げて進撃する。既存のウクライナ軍歩兵部隊も加勢し、ロシアの敗残兵を一掃──というのが大まかな流れではなかろうか。反転攻勢に投入される兵力は、12個旅団を中心に15万名前後に達すると推測される。