実は日銀が世界株高の原動力
1点目は、世界的株高の原動力となってきた日銀の量的緩和路線が限界に近づいていることです。
日銀は昨年9月からの6カ月間で国債を92兆円も購入し、結果的に量的緩和を再開する格好となりました。日銀は民間銀行等から国債を購入しますが、銀行はその売却代金をいったん日銀の当座預金にプールします。それが対外証券投資等の原資となります。図2が示すとおり、日銀の当座預金残高と日本の対外証券投資が連動しているのはその表れです。
このメカニズムによる対外証券投資の増加が、昨年秋以降、米長期金利の低下につながり、世界的な株高の原動力となったのです。
だからでしょう。海外紙をみると、4月に就任した植田和男・日銀総裁がイールドカーブコントロール(YCC)の運用を弾力化、ないしは撤廃した場合、日本から海外に流れていた資金の一部が本国に逆流し、欧米の金利が急騰すると牽制する論調の記事が目につきます。
筆者は、海外の金利上昇が一服し、株価も高いいまこそ、日銀はYCC政策の緩和ないしは撤廃に踏み切り、長期間にわたる異次元緩和で副作用が目立つようになった金融政策を正常化すべきだと考えています。
しかし植田総裁は就任時の会見で、「当面はYCCを維持する」と述べました。これは日銀が今後もできるだけ多くの国債を購入するということにほかなりません。
他国の中央銀行が何度も利上げを行っているのに、日本だけ金利を上げなければ、どうなるでしょうか。