「安保政策の大転換」をめぐる国会審議が本格化し始めた。4月4日の衆院本会議で岸田首相は、安保関連3文書に関し「憲法、国際法、国内法の範囲内で実施されるものであり、非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての歩みをいささかも変えるものではありません」と報告した。防衛費を増額するための法案も、近く審議入りする見通しだ。
核保有国による軍事侵攻をまざまざと見せつけられ、頭上をミサイルが飛び、隣国発の有事に巻き込まれるシナリオが声高に叫ばれる、いまの日本。周辺環境の厳しさを背景に勢いづく防衛力強化の動きに対し、「ちょっと立ち止まって考える」ための視座を、若手弁護士が提供する。
(久保木太一:弁護士)
テセウスのパラドックスとは
クレタ島の怪物を倒した英雄テセウスが乗ったとされる「テセウスの船」は、記念として保存されることになった。
しかし、時代の経過とともに腐ってしまったパーツは、順に新しいパーツに入れ替えられていった。やがて、もともとあったパーツは全て入れ替わり、全てが新しいパーツとなった。
果たして、それでも、この船は「テセウスの船」と呼ぶことができるのだろうか――。
「テセウスの船」は2020年、TBSのドラマのタイトルにもなりました。
この有名なパラドックス。現実にも、創業時から継ぎ足しされていく「秘伝のタレ」や、メンバーの入れ替わったアイドルグループなどにも当てはまると言われています。
もしかすると、憲法9条も「テセウスの船」になってしまってはいないでしょうか。