9条にもともとのパーツは残っているか

 そして2022年12月、岸田政権は安保3文書を改定し、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を新たに認めるとともに、防衛費の大幅増(それに伴う防衛増税)の方針を打ち出しました。

 今国会で、安保3文書の改定に基づいた法整備がなされれば、憲法9条の残されていた本来のパーツは、さらなる入れ替えを余儀なくされます。

 敵基地攻撃能力を認めることは、3要件との関係で言うと、③に関わるものと考えられます。

 つまり「必要最小限度の実力行使」とは、従来、日本の領土・領空・領海内での撃退を意味していたものと解されるところ、敵基地攻撃能力によって、日本国外での武力行使(ミサイル使用に留まらず、海外「派兵」も含みます)が可能になるからです。

 このような観点から、元内閣法制局長官の阪田雅裕氏は、安保法制と敵基地攻撃能力の保有によって、ついに「憲法9条の死」がもたらされたというショッキングな見解を発表しています。

 また、防衛費の大幅増に関してですが、これは、憲法9条の下、長年の暗黙の了解とされていた防衛費GDP比1%以内ルールを大きく打ち破り、漸進的にGDP比2%にまで増額する、というものです。

 GDP比2%は欧州のスタンダードだ、というような説明がされることもありますが、日本がGDP比2%に防衛費を増額すると、日本は、アメリカ、中国に次ぐ3番目の軍事大国になります。

 それでもなお、日本は「戦力」(軍隊)を持たない国と言えるのでしょうか。

 果たして、憲法9条のもともとのパーツは、現在、どれくらい残っているのでしょうか。