安保3文書の閣議決定について記者会見する岸田文雄首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(河野克俊:前統合幕僚長)

 12月16日に「安全保障3文書」が公表された。

 注目すべきは、やはり「反撃能力」の保有であろう。「反撃能力」という言葉を使っているが、自衛隊が初めて、敵領土への攻撃力を持つことに踏み込んだということだ。

 これは自衛隊のみならず戦後日本の歴史にとって大きな一歩と言える。

日米共同の「盾」「矛」時代へ

 今回、政府が下した決定は、日米同盟を「役割分担」から「共同」の関係へと深化させるものだ。

 これまで日本は、「矛」の役割をもっぱら米軍に任せてきた。その一方で、自衛隊は「盾」に徹してきた。

 だが、日本がミサイル攻撃の脅威にさらされ、敵基地を攻撃してもらいたいというタイミングで米国が攻撃してくれる保障はない。米国には米国の戦術上の都合もある。

 その場合、我が国が攻撃力を保有していなければ「お手上げ」と言うことになる。

 相対的に見て、米国の国力、軍事力は落ちてきている。現下の安全保障環境が厳しさを増しているのは誰の目にも明らかだ。

 こうした状況下で自衛隊が役割を拡大することは、日米同盟の強化にもつながる。

自衛隊と米軍が11月に実施した共同統合演習「キーン・ソード23」。鹿児島県・徳之島では、離島防衛を想定した訓練が実施された(写真:UPI/アフロ)

 反撃能力を行使するとなれば、当然、これは日米共同で実施されるオペレーションとなる。

 日本は長射程のミサイルを持つことになるが、反撃はただそれだけでできるようになるわけではない。目標に関する情報をつかみ、打撃の効果を見極めなければならない。

 そうした能力は、ただミサイルを持つだけで満たされるものではない。米軍との緊密な連携なくしては、十分な反撃能力を保持したことにはならないのだ。