中国人民解放軍の建国70周年軍事パレード(資料写真、2019年10月1日、写真:新華社/アフロ)

(藤谷 昌敏:日本戦略研究フォーラム政策提言委員・経済安全保障マネジメント支援機構上席研究員・元公安調査庁金沢公安調査事務所長)

 内閣が改造され、第2次岸田内閣が発足した。今回の内閣においても、引き続き問題とされるのは、何と言っても安全保障問題だ。

 これまでの日本は、戦後の吉田内閣が打ち出した「小さな政府」「小さな軍隊」「大きな経済」の路線を約80年にわたって継承してきた。その路線の根底が「日米安全保障条約」であり、「日本国憲法第9条」だ。そのため、日本は全国に米軍基地を置くことを甘受してきたのであり、国内的には60年安保、70年安保という大きな社会混乱も味わった。

 反面、日本のGNP(当時の指標:国民総生産)は、1966年にフランス、1967年にイギリスを抜き、1968年にはついにアメリカに次ぐ第2位となった。その後、経済グローバル化の進展から、GNPに代わってGDP(国内総生産)が国際指標として使用され、2010年には日本のGDPは中国に抜かれて世界第3位になったが、この間、日本のGDPは42年間世界第2位の地位にあったことになる。敗戦で国土が荒廃し、しかも資源のない国でありながら、これほどの経済発展をした国は、近代史上、日本以外には例を見ない。

 だが、どんな成功を体験した国でも、引き換えに必ず失ったものがあるはずだ。日本が経済発展と引き換えに失ったもののうちの1つが、本稿で取り上げる「安全保障」だ。中国が著しい台頭を見せている今、安全保障の問題が改めて問い直されている。