安保法制でパーツの半分が入れ替わった
自衛隊は、専守防衛の戦略に則っている限り、「戦力」ではなく、「軍隊」ではない、というのが有力な考え方です。
そして、専守防衛の自衛隊は、以下の自衛権発動の3要件(旧3要件)に従うものと従来考えられてきました。
①我が国に対する急迫不正の侵害があること、すなわち、武力攻撃が発生したこと
②この場合に他の適当な手段がないこと
③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
この3要件、ひいては専守防衛の考え方について、重大なパーツの入れ替えがされたのが、安保法制(戦争法)の成立でした。
2015年8月、当時の安倍政権下において、安保法制が強行採決されました。これにより、集団的自衛権の行使が認められるようになります。

集団的自衛権とは、日本が直接攻められた場合に限らず、外国(主にアメリカが想定されています)が攻められた場合にも、一定の要件を満たす場合には、日本が武力行使をすることができる、というものです。
憲法9条の下では集団的自衛権の行使はできない、というのが、それまでの政府解釈でした。ゆえに、安保法制によって、憲法9条の解釈が明確に変えられたのです。
また、それに伴い、上記の自衛権発動の3要件も書き換えられました(新3要件)。
②も文言が少し変わっていますが、明らかに変わっているのは①です。
①我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
現在、ネットで3要件と調べると、この新3要件のみが、さも最初からその姿であったかのように出てきます。
まさに「テセウスの船」を感じさせる事態です。
私個人としては、集団的自衛権の容認によって、憲法9条のパーツは半分以上が入れ替わってしまったように感じています。
なお、2021年9月に、立憲民主党、日本共産党、社民党、れいわ新選組の4党が結んだ政策協定にも、安保法制の違憲部分(集団的自衛権容認部分)の廃止が盛り込まれており、このパーツの入れ替えは、決して見過ごされてはいません。