米海軍のミサイル駆逐艦「ポーター」からシリア国軍基地に向けて発射されたトマホークミサイル(ビデオ画像より)(資料写真、2017年4月7日、提供:Mass Communication Specialist 3rd Class Ford Williams/U.S. Navy/AP/アフロ)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 2022年12月16日、「防衛3文書」が閣議決定され、日本の安全保障は大きく舵を切ることになりました。

 公開された3文書はいわゆる“市ヶ谷文学”(防衛省的な文書)ということもあり、一読しただけでは分かり難いと感じるものでした。しかし、過去の3文書からの変遷や防衛関係法の改正を踏まえて読み込むと、政府が、真に国を安らかに保つための方策としてこれを定めたことが理解できます。

 かなり長い文書なので重要事項が山盛りですが、エッセンスをまとめてみました。前編、後編の2回に分けて解説していきます。

「防衛3文書」とは

 最初に、3文書に関する最低限の説明をしておきましょう。

 防衛3文書とは、次の3つの文書を指します。厳密には正確とは言えない部分がありますが、分かりやすさを優先して説明すると次のようになります。

(1)「国家安全保障戦略」

 国と国民の安全を維持するために、全ての政府関係組織がどのように行動するかを定めた方針

(2)「国家防衛戦略」

 他国からの侵略を抑止するために、防衛省・自衛隊が採るべき行動の方針。同時に、戦争が生起した場合に、防衛省・自衛隊が採るべき防衛行動の方針

(3)「防衛力整備計画」

 国家防衛戦略を実現するために、防衛省・自衛隊が整備すべき装備等の計画