(国際ジャーナリスト・木村正人)
ウクライナ戦争を受け、日本の岸田政権は12月16日「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を閣議決定した。敵基地攻撃能力を保有することを明記し、米国製巡航ミサイル「トマホーク」(最大射程2400キロメートル)の2026年度配備を目指す。今後5年間の防衛費総額は19~23年度の1.5倍を超える約43兆円となる増額だ。
敵基地攻撃能力の保有は集団的自衛権の限定的行使容認に続く戦後防衛政策の大転換となる。27年度の防衛費とそれを補完する取り組みを合わせた予算は国内総生産(GDP)の2%を確保する。財源となる増税の対象は法人、所得、たばこ税。1兆円規模になる増税に反対する声は各社世論調査で69%(毎日新聞)、66%(朝日新聞)、64.9%(共同通信)にのぼる。
だが、ミサイルや自爆ドローンを使ったロシアの攻撃を目の当たりにすると、敵基地攻撃能力の保有もトマホークの配備も「専守防衛」の日本には必要不可欠な決断だ。北大西洋条約機構(NATO)の相互運用性プラットフォームに参加する日本にとって防衛費GDPの2%も避けては通れない。たとえばオーストラリアの国防費は27年にGDPの2.3%に達すると推定されている。
香田洋二・元海上自衛隊自衛艦隊司令官は今年4月、筆者のインタビューに「日本の防衛は必要最小限だ。ウクライナの戦いは日本の専守防衛と似ている。ウクライナが助かっているのは米国をはじめ北大西洋条約機構(NATO)加盟国が対戦車ミサイルなどを千発単位で供給しているからだ。日本は今回の戦争を教訓にすべきだ」と答えている。
(参考)https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69845
ロシア領内奥深くにある空軍基地をドローンで攻撃したウクライナ軍
ロシアは今、ウクライナのウィークポイントを徹底的に衝こうとしている。
地上戦でウクライナ軍に押し返されたロシア軍は「冬将軍」到来に合わせ、ミサイルや自爆ドローン(無人航空機)を使ったエネルギーインフラへの攻撃を強化している。9回目の大規模なインフラ攻撃(12月16日)を受け、キーウの報道官ミハイロ・シャイマノフ氏は「ロシアが2月に開始した全面戦争開始以来、最大の攻撃の1つだ」と憤った。