(国際ジャーナリスト・木村正人)
ドイツ連邦検察庁は7日、極右テロ運動「ライヒスビュルガー(帝国市民)」の信奉者や支援者が独自国家樹立のため政府転覆を狙ってドイツ連邦議会の襲撃を企てた疑いがあるとして3000人超を投入して国内約130カ所を捜索、25人を拘束した。
700年の歴史を持つ貴族の末裔である主犯格ハインリヒ13世ロイス公(71)が国家元首になる計画だった。
閑静な温泉街の狩猟小屋でクーデター計画は立てられた
旧東ドイツのテューリンゲン州バート・ローベンシュタインは人口6000人ほどの閑静な温泉街だ。米紙ニューヨーク・タイムズによると、その街を一望できる急峻な丘の上にハインリヒ13世ロイス公の狩猟小屋が立っている。ハインリヒ13世ロイス公は週末をこの温泉街で過ごし、市長や村の住民にも人気があった。
この狩猟小屋にも7日、捜索が入った。検察当局や情報機関によると、ハインリヒ13世ロイス公は狩猟小屋で「帝国市民」の共謀者たちとドイツ政府を転覆し、首相の処刑を企てる密議を開いていた。狩猟小屋の地下には武器や爆発物が隠され、眼下に広がる森の中で射撃訓練が行われていたとされる。
ハインリヒ13世ロイス公を取り巻く共謀者グループには極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」元連邦議会(下院)議員で現職裁判官ビルギット・マルザック=ヴィンクマン容疑者のほか、エリート特殊部隊の現・元兵士、警察官、陸軍予備役など軍とつながりのある人物が含まれていたという。「帝国市民」とはいったい何者なのか。