(英エコノミスト誌 2022年12月17日号)

300キロにも及ぶ長射程が可能なATACMS(Army Tactical Missile System)はウクライナ軍が喉から手が出るほど欲しい兵器だ(2017年韓国での訓練写真、米陸軍のサイトより)

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前例のない連続会見で、ウクライナの司令官らが行く手に待ち受ける正念場の数カ月について英エコノミスト誌に語った。

 ロシアは新たな攻撃のために兵士と武器を集結させている。

 春になってからの可能性が高いが、早ければ1月にも、ウクライナ東部のドンバス地方や南部から、場合によっては北に位置するロシアの傀儡国家ベラルーシからさえも大規模な攻撃を仕掛けてくる恐れがある。

 ロシア軍の狙いはウクライナ軍を押し戻すことであり、再び首都キーウ(キエフ)制圧を試みる可能性すらある――。

 これは本誌エコノミストの論評ではなく、ウクライナ軍の総司令官を務めるヴァレリー・ザルジニー大将の見立てだ。

 ここ2週間以内に行われた前例のない一連の会見で、同大将がウォロディミル・ゼレンスキー大統領、陸軍司令官のオレクサンド・シルスキー大将とともに今後カ月間の正念場について我々に警鐘を鳴らした。

「ロシアは約20万人の新たな部隊を準備している」

 ザルジニー大将は本誌にこう語った。

「再びキーウに攻勢をかけてくることは間違いない」

 西側の情報筋は、ロシアのウクライナ戦総司令官のセルゲイ・スロビキン大将は最初から、この戦いは数年間に及ぶと見ていたと話している。

早計な交渉で侵攻前の轍を踏むな

 これはウクライナ国外での見方ではない。ぬかるみが凍り付くなか、戦いは膠着状態に入ったと考えられている。約1000キロに及ぶ戦線ではこの1カ月ほど、動きがほとんど見られない。

 英国軍の制服組トップであるトニー・ラダキン提督は先日、ちょうど今は砲弾が不足していることからロシアが地上作戦に乗り出す公算は「急速に小さくなっている」と述べている。

 戦いが膠着しているように見えるため、和平に対する新たな関心が生じている。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領、米国のジョー・バイデン大統領、そして(全く別の理由から)ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の3人はいずれもここ数日、外交的解決について話をした。

 西側の多くの人は、戦争の被害に愕然とし、また自分本位な話だがエネルギー価格の高騰にうんざりして、そうした動きを歓迎するだろう。

 だが、ウクライナの司令官たちは、外交的解決を急ぐべきではないと口をそろえる。彼らは正しい。