写真提供:共同通信社
九州発のディスカウント店を運営し、小売企業として成長を続けてきたトライアルホールディングス。強みは、店頭の現場から経営基盤までを一気通貫で捉える独自のデータ活用だ。同社は小売企業の店舗運営の在り方をどう変えてきたのか。「第9回経営企画イノベーション」(Japan Innovation Review主催セミナー)に登壇したトライアルホールディングス執行役員グループ経営企画部長の小林大悟氏の講演を基に、同社のデジタル戦略と具体的な取り組みを紹介する。
祖業のITを強みに、データで成長を続けるトライアル
トライアルホールディングスは、郊外を中心に約4000平方メートル規模のスーパーセンターや、その倍の広さを持つメガセンターといった大型商業施設を主体に展開し、全国で357店舗を運営している(2025年8月時点)。
売上高は右肩上がりで推移し、25期連続の増収を達成。2025年6月期の連結売上高は8038億円に達した。さらに2025年7月には西友を完全子会社化し、関東を中心とする都市部でも事業基盤を大きく強化している。
成長の背景には、従来型の小売モデルに依存せず、創業当初から積み上げてきた独自のデジタル基盤がある。同社は「流通小売事業」と「リテールAI事業」を事業の二本柱とし、効率的なリアル店舗網と高度なデータ活用を一体で運用している。小林氏は「トライアルグループは流通小売事業を中心とする企業ですが、テクノロジーで流通を変革する点に強みがあり、これが他社との差別化要因になっています」と語る。
同社はもともとITを祖業とする企業であり、創業当初の1980年代からPOS(販売時点情報管理)を中心としたシステム開発を手掛けてきた。さらに、中国にソフトウエア開発拠点を設けるなど、現在に至るまで多数のエンジニアを抱えている。小売りを主な事業領域としながらも、創業時からのテクノロジー活用が企業文化として息づいており、従来の小売業とは異なる存在感を形成している。






