自衛隊と憲法9条との緊張関係

 自衛隊が創設されたにもかかわらず、それがあまり大きなパーツの入れ替えにならなかったのはなぜでしょうか。

 それは自衛隊が、憲法9条の制約を受けていたからです。

「陸海空軍その他の戦力」を禁じている憲法9条が存在する以上、自衛隊は、他の国の「軍隊」と同様であってはなりません。

「戦力」ではない自衛隊は、「必要最小限度」の実力組織として、常に憲法9条と緊張関係にあります。憲法9条の監視、そして、憲法9条違反がないかを監視する国民の目に晒されているのです。

 例えば、海外派兵です。

 時の政権がベトナム戦争でアメリカを支持しようと、イラク戦争でアメリカの支援を決定したとしても、憲法9条(及びそれに基づく法律)の縛りによって、自衛隊を派兵することはできませんでした。

 イラク戦争で小泉政権ができたことは、「非戦闘地域」における海外「派遣」です(なお、その一部については、事後的に、裁判所によって憲法9条違反として断罪されています)。

 南スーダンに「派遣」されていた自衛隊の日報に「戦闘」についての記述があったことが明らかになり、撤退を余儀なくされたことは、比較的記憶に新しいかもしれません。

 その他にも、防衛費は対GDP比の1%以内に抑えるという長年守られた不文律も、憲法9条があるがゆえでしょう。

 加えて、何より、「専守防衛」という日本独自の戦略は、憲法9条による制約にほかなりません。

 そして、自衛隊が「専守防衛」である限りは、自衛隊の存在を肯定的に捉えるというのが、国民の大多数の感覚に違いありません。