──大井川鉄道で保存蒸気機関車の運転を成功させた白井昭さん(元副社長)が、似たようなことを言っていました。「何でもいい。一つのプロジェクトを成功させろ。そうすることで、日本の鉄道の姿が変わる」と。
鳥塚氏:いすみ鉄道も、営業成績は下から数えた方が早いような路線でした。営業成績でいうのであれば、わたらせ渓谷鉄道や、真岡鉄道の方がはるかに良い。いすみ鉄道を運営できるようになれば、全国のローカル線を運営できるようになるはずです。
えちごトキめき鉄道も同じ考え方です。日本全国の並行在来線の運行が潤滑になれば、この国の物流をしっかりと支えることができるようになるのです。
なぜ高校生向けの自習室をつくったのか
──えちごトキめき鉄道の社長になって、まず手掛けたことは何でしたか?
鳥塚氏:大掛かりなことはできなかったのですが、まず直江津駅に高校生のための自習室をつくりました。毎日利用しているお客様にサービスを還元することが、鉄道会社として当然のことですから。
その次に、夜行列車の運転を始めました。第三セクター鉄道の夜行列車というのは、国鉄時代に運転されていたように長距離を走るものではなく、短い距離を夜通しかけて往復することで、往年の「夜汽車」の雰囲気を味わってもらおうという趣向です。これはいすみ鉄道でもやったことがあるので、導入はスムーズでした。
いまでこそ、同じ趣向の列車が各地で運転されていますが、これを初めて運行したのはいすみ鉄道です。