懐かしい車両を使うだけでは力不足

──恐らく、そうはなりませんね。

鳥塚氏:私がいすみ鉄道に(旧国鉄の)キハ52形を導入した時には、まだ全国にたくさんの国鉄型車両が残っていましたし、今は大人気のキハ40形にしても、あちこちのローカル線、第三セクター鉄道で運転されていました。

 でも、全国どこでも人気が出たのかというと、そうではない。なぜか?

 全国の多くの国鉄形車両には、付加価値がつけられていなかったのです。古い車両に価値をつけるにはレストラン列車にするなど「磨き上げ」が必要なのです。私はそうした自分の手の内をすべて公開しました。

 なぜ、公開したかというと、(ほかの鉄道会社とは)「商圏」が重ならないからです。すると、全国で観光列車や、「グルメ列車」が運転されるようになった。それで良いのです。

 活性化の動きが出てきたことで、全国のローカル鉄道で単純に「赤字だから廃止しよう」ということが言われなくなった。ローカル線の在り方が見直されるようになったのですから。

──鳥塚さんは、航空会社(英ブリティッシュ・エアウェイズ)にお勤めでした。それがなぜ、鉄道会社に転出したのか。もちろん、ご自身が鉄道好きだったということもあるのでしょうが、航空会社の方が、何かと「割が良い」ような気もするのですが。

鳥塚氏:もともと、私がいすみ鉄道の社長公募に応募したきっかけは、「ローカル線の使い方を皆があまりにも知らない」と感じたからです。