「地域の需要だけで維持」と考えてはいけない

鳥塚亮(とりづか・あきら)氏 1960年生まれ東京都出身。元ブリティッシュ・エアウェイズ旅客運航部長。2009年に公募で千葉県のいすみ鉄道代表取締役社長に就任。ムーミン列車、昭和の国鉄形ディーゼルカー、訓練費用自己負担による自社養成乗務員運転士の募集、レストラン列車などをプロデュースし、いすみ鉄道を一躍全国区にし、地方創生に貢献。2019年9月、新潟県の第三セクターえちごトキめき鉄道社長に就任。NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」顧問

鳥塚氏:地域の需要だけで、ローカル線を維持したいという。けれども、それは違うでしょう、と。

 廃止になった国鉄ローカル線が第三セクター鉄道に転換される時には、地元に「転換交付金」が支給されます。これは路線の距離に応じて額が決定するので、北海道のように長大なローカル線が第三セクター鉄道に転換された時には、交付金の総額も莫大なものとなります。

 交付金は、もちろん、転換後の代替交通機関の運営に役立てられるべく支給されるものですが、多くの自治体では、このお金を有効利用する術を知らず、結局、皆で「山分け」して終わりです。

──それは交付金支給の本来的な意味からはかけ離れているように感じます。代替交通機関が確保されて、その恩恵を利用者が受けるために支給されるのが「転換交付金」なのでしょうから。

鳥塚氏:私がいすみ鉄道の社長に就任した時は、国鉄から転換された第三セクター鉄道が廃止から一定の年月を経ていて、その先の10年が第三セクター鉄道にとってのひとつの変革期に差し掛かるだろうと感じられた時代でもありました。

 それであれば、私の手でローカル線の使い方を提案してみたい。単に交付金や、補助金に頼って運行を続けるのではなく、鉄道会社自身の手で新たな需要を創出することで、地域の足を守ってみたい。そう考えたのです。