部下にダメ出しする際の「3プラス3原則」
津野:一番重要なことは、個別配慮型リーダーシップを発揮することです。個別配慮型リーダーシップとは、部下がそれぞれ異なった個性や価値観を有していることを理解した上で、個人として接し、長所を伸ばすように心がけている状態です。これさえできていれば、まず問題はないでしょう。
次に、体調を整えることです。ストレスが溜まっている状態では、他者に対して優しく接することができません。自分自身の心身を大切に扱い、余裕がある状態にすることが必要です。
また、部下に対してダメ出しをする際の方法として、私は「3プラス3原則」を推奨しています。
まず、初めの3つは「周りに人がいない状態で行う」「ほめられる点・できている点を先に伝える」「人格否定をせずに、何をどうしてほしいのか伝える」。そして、「何をどうしてほしいのか伝える」際に、「部下に直してほしい『行動』を明確に指摘する」「なぜその行動が問題であるのかを補足説明する」「どうしてほしいのかを依頼する」の3つを伝えます。
これに沿ってやれば、パワハラせずに本当に言いたいこと、直してほしいことを伝えることができる。これが、パワハラにならない黄金の「3プラス3原則」です。
──今後、日本のパワハラをなくしていくために、政府、企業、個人ができること、津野先生がそれぞれに取り組んでほしいと思われることがありましたら教えてください。
津野:政府には、まず差別禁止にかかわる法律を策定していただきたいと思います。
そして、政府が差別禁止法を策定した場合、厚生労働省にはエビデンスに基づいたガイドラインを作ってほしいと思います。現在のパワハラ防止法では、雇用上の管理措置として、相談窓口を作る、研修を実施する、ハラスメントが発生したら迅速に対応することが定められています。
しかし、ハラスメントの発生を防止するためには具体的にどのようにしたらいいのかという点については全く触れられていません。「ハラスメントはこういう職場で起こりやすい」「こういうことをすればハラスメントの発生を抑えられる」というエビデンスが既にたくさん出ています。それらを参考に、ハラスメント防止のための科学的根拠に基づいたガイドラインを策定すべきだと思います。