ひょっとしたらあなたもパワハラをしているかもしれない(写真:アフロ)

 厚生労働省による「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年でパワハラを受けた人の割合は労働者の30%を超える。おおよそ、3人に1人はパワハラを受けている、ということだ。

 しかし、海外と比較して、パワハラに対する日本政府及び厚生労働省の対応は科学的データに基づいておらず、不十分だという指摘がある。そう指摘するのは、『パワハラ上司を科学する』(ちくま新書)を上肢した津野香奈美氏(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究所准教授)。日本におけるパワハラ対策とはどのようなものか、パワハラはなぜ起こるのか、津野香奈美氏に聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター・ビデオクリエイター)

組織内で評価される「ダークトライアド」

──書籍内で、パワハラ行為者の性格特性について解説されていました。

津野香奈美氏(以下、津野):周囲に悪影響を及ぼす邪悪な特性「ダークトライアド」ですね。

 ダークトライアドは、マキャベリズム(マキャベリ主義)、サイコパシー(精神病質)、ナルシシズム(自己愛性傾向)の3つの性格からなります。

 マキャベリズムは、目的を達成するためには手段を選ばず、非道徳的な行為に手を染めることも厭わないような人です。サイコパシーには、良心の異常な欠落や罪悪感の無さが認められます。ナルシシズムは、いわゆる「ナルシスト」です。自身を過大評価し、他者が自分のために働いてくれて当たり前だとする傾向が見られます。

 この3つの性格には「冷淡さ」「罪悪感のなさ」「自己中心性」の共通点があります。いずれも、パワハラ行為者になりやすい特徴です。

 また、ダークトライアドはパーソナリティ障害とも深い関係があります。日常生活に支障が出ている場合、サイコパシーは反社会性パーソナリティ障害、ナルシシズムは自己愛性パーソナリティ障害の診断基準に該当する可能性があります。

 残念なことに、ダークトライアドの人は社会的に評価される傾向にあります。自分を良く見せることがうまく、また目標達成のためなら人を利用することを厭わないためです。

 ダークトライアドの人は自分が評価されるためならば手段を選びません。結果、部下を潰すようなパワハラをしながら成果を上げる。会社上層部からは評価され、出世してしまう。

──2020年6月に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用安定及び職業生活の充実などに関する法律(改正労働施策総合推進法、いわゆるパワハラ防止法)」が改正施行されました。これは、世界各国と比較して、先進的な法律なのでしょうか。

津野:海外の類似の法律と比較して、日本のパワハラ防止法は特殊なものです。