松永が女性被害者を落とした方法

──松永は様々なターゲットに近づいては、相手と深い関係になり、やがて弱みを握り、虐待行為で追い詰めつつ相手からカネを引き出します。男性もいますが、女性の被害者が多く、男女の関係になってから相手を洗脳しつつ脅かしていくことが多かった印象を受けます。松永に取り込まれていく人々に共通点のようなものは見られますか。

小野:女性を例にとると、松永に狙われる女性たちは、家庭生活に不満を抱える女性が多かった印象を受けます。ただし、不満とはいっても、どこの夫婦にでもあるような内容でした。それを松永が、いかにもとんでもないことだというふうに煽るのです。

 松永と緒方が探偵を装って広告を出していた時期がありました。それを見て松永に連絡した田岡真由美さんという女性がいます。

 松永は自分の経歴を偽ってターゲットに近づきます。人によっては東大卒、人によっては京大卒などと語り、自分が高学歴であるかのように演出して相手の女性をどんどん口説いていく。やがて、自分と将来一緒になれるような錯覚を持たせます。田岡さんもそのような形で松永に言い含められ、夫の元を出て、子供を連れて松永のところにやってきた。

 その後に被害にあった原武裕子さんという女性は、広田由紀夫さんの高校の同級生の妻で、松永は広田さんを通じて彼女と知り合いました。松永はここでも夫への不満を聞き出しながら彼女に色目を使って接近し、自分と結婚できるような錯覚をおぼえさせていきます。彼女も後に夫の元を去りました。

 また、末松祥子さんという女性がいます。松永は彼女をそそのかし、夫の不満を聞き出し、彼女もまた子供を連れて家を出ました。その後、松永と一緒に住んでいたアパートで、当時2歳だった末松さんの娘が椅子から落ちて事故死しており、それから数カ月後に末松さんも別府湾で水死している。明らかに不審な死ですが、この方の場合は事件化していません。

 松永の女性に対する接近の仕方はいつも同じパターンを辿っています。

──松永が最初に結婚した女性も、松永から暴力を受けてシェルターに逃げ込んでいた、というお話もありました。