3期目に突入した習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

 ウクライナ侵攻開始から1年、世界のパワーバランスが激変している。習近平はどんな思いで追い詰められるプーチンを見ているのか。共産党党大会で新たに選出された幹部たちの中から誰が習近平の後継者に選ばれるのか。すでにアメリカを抜いているという中国の宇宙開発はどこまで進んでいるのか──。『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)を上梓した中国問題グローバル研究所所長の遠藤誉氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──昨年10月、中国共産党第20回党大会が開催され、最高意思決定機関である中国共産党中央政治局常務委員、チャイナ・セブンのメンバーが発表されました。中国共産党において、チャイナ・セブンはどれほどの権力を持つ存在なのでしょうか?

遠藤誉氏(以下、遠藤):中国という国はご存じの通り、中国共産党の一党独裁体制です。14億人の総人口の中のおよそ1億人が共産党員です。そのうちの2340名が昨年の第20回党大会に全国の代表として参加しました。この中から205名の中共中央委員会委員が選ばれ、さらに、その中から24人の中共中央政治局委員が選ばれて、この中から最終的に7人の中共中央政治局常務委員が選ばれる。ピラミッド型の権力構造のトップを占める7人は絶大な権力を持ちます。

 習近平政権の前の胡錦濤政権の時は、チャイナ・セブンにあたるポジションは9人いたので「チャイナ・ナイン」と私は呼んでいました。2012年の第18回党大会の時に、今の7人に数が減ったのです。

 なぜ習近平は3期目を狙ったのか、ということに私は注目してきました。習近平の父親の習仲勲(しゅう・ちゅうくん)は、1962年に鄧小平の陰謀によって失脚して16年も牢獄生活を送りました。ですから、習近平は鄧小平に対して強烈な復讐心を抱いており、雪辱を果たすために3期目を狙ったと考えられます。

 新チャイナ・セブンが発表されると、7人全員で習仲勲が建設した「革命の聖地」延安(えんあん)に視察に訪れた。「父さん、敵を討ったよ」とそこで報告したのではないかと想像します。

──異様な出世を経て、新チャイナ・セブンの1人に加わった丁薛祥(てい・せつしょう)についてページを割かれています。あらためて、丁薛祥とはどのような経歴を持つ人なのでしょうか。