(国際ジャーナリスト・木村正人)
[ロンドン]4日、米軍のステルス戦闘機F-22が東海岸沖で中国の巨大偵察気球を撃墜した。
巨大偵察気球は1月28日、アラスカ上空で発見され、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の運用基地があるモンタナ州上空も通過。ロイド・オースティン米国防長官は「気球は米本土の戦略的拠点を監視する目的で中国が使っていた。容認できない主権の侵害に効果的に対処した」と表明し、ヒートアップする米中冷戦を浮き彫りにした。
米本土の戦略的拠点を監視するのが目的なのか
中国外交部は「米国防総省は、気球は地上の人々に対して軍事的・物理的な脅威を与えないと述べている。にもかかわらず、米国は明らかに武力行使を主張することで過剰反応した。国際慣行に著しく違反している」と反論した。環球時報は「米国の動きは大砲で蚊を撃つようなもので大袈裟なだけでなく非現実的だ」という中国軍事専門家の声を伝えた。
復旦大学グローバルサイバー空間ガバナンス研究所長シェン・イー氏は環球時報に「さまよえる気球は世界の超軍事大国・米国をあたかも強大な敵に直面したかのように反応させた。米国の議員たちはまるで地球最後の日が近づいているかのように悲鳴を上げ、気球はF-22による“初撃墜”の餌食にされた」と寄稿している。
「超大国はなぜか、さまよえる風船にびくびくし、自ら米国が張り子の虎であることを露呈してみせた。危機管理と戦略的安定には米中の効果的なコミュニケーションが必要だ。ワシントンの政治家たちは飛び上がり、怒鳴り、叫び、米中関係を政治的内紛の犠牲にして互いにぶつかり、噛み合っている。極めて無責任な連中である」(イー氏)