(写真:ロイター/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

[ロンドン]中国教育省の運営する「国家留学基金管理委員会(CSC)」の奨学金を利用する中国人留学生がスウェーデンの大学博士課程に留学する前に、中国共産党に忠誠を示す誓約書に署名させられていたことがスウェーデン紙ダーゲンス・ニュヘテルや国際教育の専門職のための英情報サイトTHE PIEなどの報道で明らかになった。

「国家の利益に反しない」と誓約書

 ダーゲンス・ニュヘテル紙の調査で、カロリンスカ研究所(医科大学、英高等教育専門誌Times Higher Education[THE]の世界大学ランキングで49位)、ルンド大学(同119位)、ウプサラ大学(同148位)、ストックホルム王立工科大学(同155位)といったスウェーデンの上位校でCSC奨学金を利用する30人以上の中国人留学生が誓約書に署名させられていたことが分かった。

 2021年には2万7000人の中国人留学生が公的資金で米英などの大学に送り込まれる予定だった。誓約書では「国家の利益に反しない」「当局の意向に反する『活動』には決して参加しない」ことが求められている。

 誓約の内容に逆らったり、学業や研究が中断されたりすると、中国に残された家族が支給額の最大30%を返済する責任を負わされる恐れがあるという。

 ルンド大学医学部の国際化担当副学部長はTHE PIEの取材に「本当に心配なのは中国人留学生が海外に留学している間は、通常近親者である留学生の保証人が長期にわたって国外に出られないという文言が含まれていることだ。これはまさに独裁国家のやり方だ。家族が母国で人質に取られているに等しい」と指摘している。