(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)
「秀才教育」とは、優れた素質と才能を持って生まれた、児童や青少年のための特別な教育のことだ。
韓国では「英才教育」と言われているが、北朝鮮では「革命の英才」「朝鮮の英才」などという表現によって金氏一家の天才性を褒め称えるため、「英才」という言葉は神格化されおり、金氏一家の他に用いることはない。そのため、北朝鮮では才能を持って生まれた子供や青少年を「英才」とは呼ばずに「秀才」と呼ぶ。
それでは、北朝鮮の「秀才教育制度」は一体どのようなものなのだろうか。
もともとは理念に反するとされていた
北朝鮮では国防産業と北朝鮮体制宣伝のために、1950年代から秀才教育が実施されていた。ただ、当時は非常に消極的であった。金日成(キム・イルソン)が、秀才教育に対して否定的だったからだ。
1963年3月、北朝鮮の教育関係者の会合の席で、金日成は「我々は、秀才教育論に反対する」と言及したことがあった。それは、北朝鮮の教育政策が社会主義理念に基づいた平等主義、集団主義による教育を標榜していたことによる。
持って生まれた個人の能力差を認め、それぞれに適切な教育環境を提供する秀才教育は、北朝鮮の教育政策とは相反するものだったのだ。
そのため、当時の秀才教育は体制維持のための特定分野にのみ実施されていた。語学人材養成のために1958年に設立された平壌外国語学校と、1960年代に設立された芸能、芸術、体育分野の秀才学校の二つで、多くの学生を対象にした秀才教育はまだ行われていなかった。
しかし、金正日(キム・ジョンイル)が、金日成の正式な後継者として登場した1980年代初期から、北朝鮮の秀才教育は本格的に進められるようになった。