平壌高麗ホテル。右側が金氏一族の特閣(Nicor, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

「特閣」とは、「特別に利用される高位クラスの閣(御殿)」である。

 どんな国にも、国賓のための迎賓館や、最高統帥権者のための専用休養所のような施設はあるが、北朝鮮ほど多種多様な特閣が数多く存在する国はないだろう。

 国賓のための特閣も非常に多いが、金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)、金正恩(キム・ジョンウン)と、その家族のためだけの特閣が、さらに別に存在する。

 北朝鮮の特閣には、大きく二つの種類がある。一つは貴賓を接待するための「招待所(迎賓館)」であり、もう一つは金日成、金正日、金正恩と、その家族のためだけに作られた「休養所」だ。

 北朝鮮の人々は、招待所と休養所のどちらも特閣と呼ぶが、実際は招待所と休養所は完全に別の概念だ。

 招待所は、国賓級貴賓のために存在する特閣であり、休養所は北朝鮮の最高指導者と、その家族のための特閣である。

 まず、北朝鮮に存在する招待所について具体的に見てみよう。

 招待所は2種類あり、そのうちの一つは北朝鮮政府が管理・運営する政府招待所だ。

 政府招待所を管理し運営する機関は護衛司令部である。護衛司令部2局にある招待管理部が担当で、北朝鮮の政府招待所に関する、すべての管理運営を担当している。

 現在、ここで管理運営している政府招待所は、約40カ所だ。

 平壌市中心区域だけでも、牡丹峰(モランボン)招待所、興夫(フンブ)招待所、酒岩山(チュアムサン)招待所、書斎谷(チョセゴル)招待所などがある。

 平壌市周辺区域にも、百花園(ペッカウォン)招待所、長寿園(チャンスウォン)招待所、鉄峯(チョルボン)招待所、マラム招待所、烽火里(ポンファリ)招待所などがある。

 百花園招待所は、外国の最高級国家関係者が宿泊する最高の招待所だ。日本の小泉純一郎元総理や、韓国の金大中(キム・デジュン)元大統領、廬武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が、北朝鮮を訪問したときに利用した。

 名前の由来は、「百種類の花が、のどかに満開する園」という意味だ。