(立花 志音:在韓ライター)
「お母さん、読むか分からないけどこの本注文して。課題になるみたいだから」
息子に頼まれたのは『ハルビン』という歴史小説だった。タイトルを見ただけで何が書いてある本なのか、大体予想がつく。
「ブルータスお前もか……」と心の中で笑いながら検索してみる。案の定、伊藤博文をハルビン駅で暗殺した安重根について書かれた本だった。
なぜブルータスなのかというと、ここ何年か韓国では安重根がブームなのか、たびたび話題になっているのを見かけるからだ。
2009年に没後100年記念式が行われたと思えば、「2019年は没後110年!!」だと、3年後の今も筆者の住む街にはポスターが貼られている。おそらく没後120周年も楽しませてくれるだろう。
もともと抗日独立運動の英雄として仕立て上げられているので、反日教育をしている以上、常にブームと呼べるのかもしれないが。
朝鮮日報によると、その『ハルビン』は9週連続1位のベストセラーらしい。そのタイミングで、12月には安重根の人生を描いた映画と、ミュージカルが公開される。
韓国の反日活動の最新兵器は芸術である。裏ワザともいえる韓国の芸術活動には頭が下がる。この国は論理的には破綻しているが、感情表現方法が先天的に秀でている。国家自体が感情的な生き物だと言っても過言ではない。
K-POPの世界進出に飽き足らず、次々に映画、ミュージカルと新しい創作芸術を生み出して、全世界に拡散しようと日々涙ぐましい努力をしている。
自分たちの素晴らしい文化を世界中に広めようという、プライドと使命感を持っているので、彼らのモチベーションは非常に高い。
しかし、どこかで間違ってしまうと、日本に対するコンプレックスが入り混じり、異様な混合物に見えることもある。